無事是貴人

　「子どもは近所の人たちに馬鹿にされいつも悔しい
思いをしている。どうすれば世の中が変わるのでしょ
うか？」と、園が認可された数年後の保護者会でお母
さんが発言された。


　長い沈黙が続いた。



　「できるやり方で、世の中を少しずつ変えていくしかない
よね。』と、誰かが発言。

　パラパラと拍手。


　「でも、どうやって」。


　また、静寂が続いた。


　この時から三十七年以上経過した。


　少しずつ「できること」をやってきた。

　たくさんのイベントを行い施設の入り口にある見えない境を
地域の方々、ボランティア等に越えていただいた。

　啓発という波紋を作り出す装置にも成る施設や事業所を市
内に点在化させることで、波動が隅々に行き渡るようにもして
きた。


　いろいろな事業主体が参入してきたことによって、それは大
きな広がりをみせてもいる。


　さて、次の世代のひとたちは真っ白い画用紙にどんな絵を描
いてくれるのだろう。

　パレットに置く色は？量は？。


　どんな未来をデザインしてくれるのだろう。



　日々の支援だけでなく地域を耕し共生という果実を育てることも
私たちの業務なのだと肝に銘じておいてほしい。


　と、近頃切にそう思う。


　日々の支援にしても、地域を耕すことにしても　いろいろ創意工夫す
ることで『私がここにいる』ことの意味が明確に見えてくる。自身の存在
もはっきりと見える、感じる。

　仮にまだそれが見えない、感じないのならその理由を追ってみる
ことがたまにはあってもよいのでは。


　是非　自身の純粋な気持ちを思い出してほしい。


　無事是貴人（ぶじこれきにん）


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いけたに