知的な障害

　知的な障害者。１０数年前までは、精神薄弱者と呼ばれていた。
精神が薄く弱い。他人の気持ちを理解できないから、何をするか
わからいのではないかと世間一般では言われていた。
　精神機能に障害があるのではなく、知的（読み書きそろばん等）
に障害があるということで、知的障害者と名称が改正された。

　そういう私もこの仕事に就くまではご多分に漏れず同じような
印象を持っていた。

　でもボランティアで知的障害児施設に行きその考えは間違って
いたことに気づいた。逆に、この方たちの支援を無性にしたくな
った。初めて、自身の存在を、存在意義を教えてもらえたと感じ
たから。知らないということは恐ろしいとも。



　少しやんちゃだったけど、ふざけあっている中で見せる笑顔は誰
にも負けないくらい私を癒してくれる知的な障害のある方がいた。
憎めない彼は、１０年ほど前に家庭の事情で園をやめた。


　１年ほど前にこの元利用者さんが亡くなったという訃報が届いた。


　このことをいずみの利用者さんに数か月前に告げると


　　「え！　ウソ」

　　「ほんとけ」

　　「バカいうな」

　　「あいつが」


　と矢継ぎ早に驚きの声をあげた。


　亡くなった方と彼はずっと一緒に学校やのぞみの園で活動
していた。


　この驚きは私にとって意外であった。


　なんとなく、１０年前のことでもあるし、彼自身も目が不自由
にもなり自身のことで精一杯ではないかと思っていたから。

　それがこの驚き。



　心でお礼を言った。「忘れないでいてくれてありがとう」と。




　なにも変わらない。そこにいるのは知的な障害者ではなく
１人の人格者でしかない。　




　知らないことは恐ろしい。人を化け物にしてしまう。怪物に
仕立てあげてしまう。そんな力を持っている。



　知っていただく手だてを考えることも私たちの生業だと思う。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いけたに